修復とは?-大きな欠損をどう治すか?-
2016/12/31
美術品の修復では、
「作品オリジナル部分と、修復とはいえオリジナルに手を加えた部分とを明確に異にすること」
を重要とします。
例えば、どのような修復方法が行われているのでしょうか?
イタリアの美術館、博物館、町の教会で注意して作品を見ると、その実例を面白いほどたくさん見ることができます。
テラコッタに彩色されたレリーフです。
色彩はほとんど残っておらず、キリストの腕は肩から欠損したままの状態です。
その他、キリストの目から上、腹、足、聖マリアの顎、胸、手に大きな欠損があったと思われます。
欠損部分を見ると、充填整形(欠損部分に詰め物をし、周りの形に合わせること)が施され、レリーフの形状を保っています。
充填整形部分の補彩方法(色を補う方法)にご注目ください。
オリジナルの色彩と同じ色を使用するのではなく、あえて薄い茶色を使用し、オリジナルのタッチと異なるタッチ(細かい線)で補彩を行っています。
≪selezione cromatica≫という補彩方法です。
フレスコ画(壁画)、彫刻、油彩画などで、大きな損傷を受けた作品によく見られる補彩方法です。
「欠損があったこともわからないくらいに、もっとうまく補彩すればいいのに・・・残念。」そう思われるかもしれませんね。しかし、
「近くで見ると修復で施された充填・補彩部分が明らかだけど、少し離れてみるとオリジナルと調和し、違和感なく作品が鑑賞できる」
これは、消極的な修復方法なのではなく、オリジナル作品とそれを制作した作家を最大限に尊重し、皆様にありのままの作品の歩み(不運な損傷・損壊も含めて)もご覧いただくための修復方法なのです。