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想い出の絵画

2024/08/08

Vicente Delgado Rubio作 油彩画「Santillana del Mar」の修復

 

修復前

うっすらと白く霧がかかったようなスペインの古い街なみ 。

スペイン・マドリード出身の画家 Vicente Delgado Rubio作 油彩画「Santillana del Mar

55.3×46.4㎝

修復ご依頼者様の若き日の想い出の作品。

修復前部分

■斜光照射観察損傷状況

木枠へのキャンバスの張りは、緩みや波うち等も見られず良好である。画面右上部分(空を描いた白色部分)に絵具の剥離、剥落が生じている。
その他、画面上中央部分、画面右上部分に「絵具層の膨れ」が生じており、キャンバス地塗り層から絵具層が剥離している。
経年の埃汚れの付着と絵具油分の過乾燥(油分の酸化)により、特に暗色部分では画面の白濁が生じている。

修復後

 

修復後全体

修復前部分

修復後部分

 


ご依頼者様とはメールのやり取りで事が足り、お会いすることのない方のほうが多い昨今。
便利なようでもあり、味気ない思いも。
そのような中、ふと所有者様の作品に対する思いや、想い出をうかがえることがあります。
作家、作品、知らなかった街、お会いしたことのないご依頼者様と少しだけ距離が近くなったようでうれしくなる瞬間。
マドリッドに住んでいた時にルビオさん(奥様日本人)宅で、お金に余裕もない若い頃に出会って思い切って購入した思い出の作品です。非常に丁寧な修復を行っていただき、大切な思い出を修復していただいたようで夫婦ともども感動しています。誠にありがとうございます。
1980年代後半、マドリッドの日本人駐在員の間でルビオさんの作品が日本人の感性にあったこともあり相当な人気となり、小生の会社にも備品として購入されて会議室に飾られていました(当時はバブル最盛期だったので[汗])。
任期が終わり帰国間際に是非ともルビオさんの小さな作品をマドリッド駐在の記念にしたいと思い、ルビオさんの工房(ルビオさん・奥様)にお邪魔してその時に工房にあった作品の中から選びましたが、「小さな」作品は売り切れで、大きめの作品がほとんどでした。
マドリッド駐在中スペイン各地を旅行しましたが、生憎スペイン・カンタブリア州のサンティジャーナ・デル・マール(Santillana del Mar)は行ったことがなく、購入躊躇しましたが、構図が気に入って思い切って購入しました。
ルビオさんからは「できれば額にはガラスをはめずに自然光で楽しんでください」とのアドバイスがあり、ガラスは入れずに30年以上。転勤で数か所(関西・関東含むバルセロナ)移動しましたがやはり絵具には”問題あり”だったんですね。今回6月の引越で剥離がひどくなったので貴工房に修復をお願いした次第です。
なお、2回目のスペイン勤務はバルセロナで、赴任後最初にSantillana del Marを旅行訪問先にしてこの絵画の構図の場所を訪れることにしました。
まさにこの構図の場所に行ってびっくり!

Santillana del Marは観光地だとは聞いていましたが、京都のような場所で絵のおばあさんが歩いている通りは銀座の歩行者天国のような人込み(笑)。

以上、余談ですが、とにかく思い出深い絵画です。
栄田順様
この度は、大切な思い出の作品の修復をご依頼いただき誠にありがとうございました!