100年前の油絵をみる ー田中苔石「日解聖人肖像」ー
2024/09/20
岡山市津島にある日蓮宗不受不施派の古刹「鷲林山妙善寺」。
その本堂にはずらりと歴代の聖人の肖像画が並ぶ。
その中の一枚、田中苔石が描いた「日解聖人肖像」
画面右下には1921と制作年が記されている。
状態をよく見てみる
額縁に画面保護アクリルはなく、長年本堂に掲げられてきた作品。
経年の汚れの付着と共に、画面には小さな絵具の剥落が点在している。
画面右下に生じた大きな「キャンバス破れ」には、過去に補修が施されている。
斜光照射観察
細い糸で、織り目の密な麻キャンバスに描かれている。
側面から光をあててみると、筆のタッチや、絵具層に生じた亀裂や剥離の様子、キャンバスの波うちの様子が見えてくる。
キャンバス破れの周辺が四角い凸状に変形しているのは、過去の補修で裏面に貼られたキャンバス片の型。
紫外線照射観察
真っ暗な部屋でブラックライトをあてて画面を見てみる。
画面にぼんやりと青白く発光しているのは、ワニスである。
その他、昔の修復で色が加えられた部分は、発光がなく黒っぽく見えることがある。
キャンバス破れの補修時に施された補彩