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坂田虎一 油彩画「童子」の修復ー①先達の修復をみるー

2023/09/12

修復前全体

■作者:坂田虎一
■作品タイトル:童子
■作品サイズ:117.1×91.0㎝
■制作年:昭和十四年(画面右下に記載あり)
■技法:油彩画
■支持体:麻キャンバス・中粗目
■絵具層:油絵具

本作品は、過去に表装の技術・素材でキャンバスの破れの補強処置「裏打ち」が施されている。画面左下にキャンバス破れ跡がみられるが(写真1)、この部分を補強するために「裏打ち」が施されている。

作品キャンバス裏面にはまず、〝肌裏”としての和紙と鳥の子紙、計2層の和紙が貼られている。次にそれを、鳥の子紙で裏打ちされたキャンバス布(合成繊維)で裏打ちししている(写真2)。裏打ちに使用されている糊は、水溶性糊(でんぷん糊)である。

経年により、裏打ちキャンバスと作品キャンバスが剥がれている部分があり、その部分は画面に凸状の変形が生じている(写真3)。その他、画面汚れ、絵具層の白濁(艶引け)、絵具の剥落が生じている。キャンバスの凸凹状変形(裏打ち布の剥がれ)を改善し、キャンバスに絵具をしっかりと定着するために、まずは、旧裏打ち布と和紙をオリジナルキャンバス裏面から剥がす作業を行った。

●写真1:キャンバスの破れ跡
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●写真2:旧裏打ちの様子
裏打ちの様子

●写真3:画面の凸凹(裏打ちキャンバスの剥がれ)
斜光写真1

●写真4:旧裏打ちキャンバスと和紙をオリジナルキャンバスから剥がす作業
肌裏・裏打ち紙