Edmond Marie Petitjean 油彩画「港の風景」の修復
2025/06/03
■Edmond Marie Petitjean 油彩画「港の風景」
港町の強い陽射しを映す水面と白い建物。 明るく晴れた空に白い雲。 経年の汚れで少しくすんで見えるものの、さわやかで明るい色彩。 一見、亀裂や剥落もなく状態は悪くないように見える。 しかし、裏面に2か所「キャンバス片」が貼り付けられていて、この作品が過去に修復されていることが分かる。
斜光照射観察
貼り付けられたキャンバス片は、「キャンバスの破れ」を補うための処置だったと思われる。
ただし、経年のキャンバスの収縮によりその部分が凸状に変形していることが分かる。
その他、目視では分からないほどの細かい亀裂もたくさんあることが分かる。
紫外線照射観察
紫外線観察で黒く沈んで見える部分が、「過去の補彩」部分。
目視ではほとんど違和感がない過去の補彩であるが、紫外線照射観察により複数個所見つけることが出来る。
過去の修復跡をみる
画面に2か所あるキャンバス破れの修復跡。 よく見ると、キャンバスの破れによって絵具が剥落した部分に、充填・補彩が施されていることが分かる。![]()
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修復処置
キャンバスの変形を修復したのち、画面洗浄、旧修復箇所の充填・整形・補彩、画面保護ワニスの塗布を行い修復を終えました。
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■キャンバス破れ部分の修復
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額縁の修復
作者銘板付きのオリジナル額縁。 木製枠にダイナミックな石膏装飾を施した後、金箔と部分的に金色塗装で仕上げられている。 過度の装飾が欠けてなくなっている。
とにかく外国の古い額縁は重いこと重いこと。。。 ■額縁左上角の欠損
■額縁右下角の欠損
オリジナル額縁と作品、やっぱりうまくマッチしていますね。
作品と額縁。
新居に飾られる前のメンテナンスとして、トータルの修復ご依頼をいただきました。
古い修復跡は、これまでこの作品が大切にされてきた証。
今回の修復を経て、新しいお家でこの作品がこれからもまた時を刻んでいくのだなと思うと、なんだかうれしく温かな気持ちになりました。
この度は、大切な作品の修復のご依頼と修復事例の掲載を快諾いただきまして誠にありがとうございました!