鏡額縁の修復
2024/07/30
「18世紀の鏡額縁」作品データ
- サイズ:105.0×70.2㎝
- 支持体:四辺木枠を留形三枚組継、上部の透かし彫り木製パーツは木枠に釘留め
- 地塗り層:ジェッソ
- 彩色層:朱色下地に金箔
- 旧補修跡あり:角接合部の開きの補強(合成接着剤による)、欠損部分にパテ充填、接着剤金箔剥がれ部分の補彩
主な損傷状況
額縁上部の透かし彫り装飾部分に割れが生じている。枠接合部(額縁の角)に開きが生じている。
左枠の縁モールディングの剥がれ(2か所)。その他、経年の埃汚れの付着。
修復処置
■洗浄:額縁全体の汚れを金箔を傷めないように溶剤を選択し洗浄する。
■「透かし彫りパーツ」を額縁本体から解体する
■透かし彫りパーツ、額縁本体の補強:パーツ、額縁本体に生じた木部の割れや石膏地塗り層の亀裂部分に、膠水を浸透させ電気ごてで加温加圧し補強を行う。
■パーツの再接着:パーツを額縁本体に接着剤(牛膠水+小麦澱粉)で接着し、元々パーツを額縁に固定していた錆びた釘の代わりに、L字金具を額縁裏面に取り付けパーツの再接着と固定補強を行う。
■充填・整形・補彩:パーツを額縁本体に接着した部分のつなぎ目部分や、その他の亀裂・あて傷部分にボローニャ石膏を膠で溶いた充填材を充填・整形する。充填部分は不透明水彩絵具と修復用樹脂絵具で補彩を行う。
充填・整形
補彩
修復後
この度は、「18世紀の鏡」貴重な額縁の修復をご依頼いただき誠にありがとうございました。かなりの重量の鏡額縁でした。
額縁上部の立体的で豪奢な透かし彫り。
その作りには過去の職人の様々な工夫が凝らされており、また、過去の修復痕からはこの額縁が歴代の所有者様に愛されてきたことを垣間見ることが出来ました。
鏡を保護するために裏板と鏡の間には古い植物の繊維をクッション代わりに
3つのパーツを組み合わせて作られた「透かし彫りパーツ」
T様、大切な作品の修復と修復事例の掲載を快諾いただきまして誠にありがとうございました。