油彩画「3名肖像(仮題)」の修復
2023/04/11
■作者:角井厚吉
■作品タイトル:3名肖像(仮題)
■作品サイズ:52.4×52.3㎝
■制作年:明治29年1月(画面右下に記載あり)
■技法:油彩画
■支持体:麻キャンバス・極細目
■絵具層:油絵具
■損傷状況
■斜光照射写真:
若干のキャンバスの張りのゆるみがあり、画面四つ角部分にキャンバスの波うちが生じている。
キャンバスはとても織り目が細かく、経年によるキャンバス麻繊維の硬化により柔軟性が乏しい。
■紫外線照射写真:
ワニスによる蛍光発光は見られず、ワニスは塗布されていないことが分かる。
絵具層の乾燥が進んだ状態であり、特に人物の着物を描いた青黒色に絵具のチョーキング(粉状化)が生じている。
その部分は紫外線照射写真で、「白っぽい部分」として観察できる。
■画面の汚れ【経年の埃汚れと虫ふんの付着】
■絵具層の白濁
絵具油分の過乾燥(酸化)により、画面は油彩画本来の艶がなく白濁した色彩となっている。
■修復後
■修復前
●修復後
—*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
ご先祖の肖像としてご家族が大切にされてこられた作品。
画面右下に、作者サインと特異な年代が記載されているものの、ずっと判読できなかったとのこと。
(もちろん私どもも・・・。)
修復にあたり岡山県立美術館 学芸員・橋村様のご助言を賜り、作者、制作年が明らかになりました。
所有者様と一緒になって作品に対する思い・理解が深まる瞬間。
修復士として、ワクワク、嬉しい瞬間でもあります。
橋村様、誠にありがとうございました!
所有者様におかれましては、大切な作品の修復を当工房にご依頼くださり、修復事例の掲載を快諾くださいまして心より御礼申し上げます。